1999年12月22日発売の「ヴァルキリープロファイル」(以降VPと略す)はまさしく神ゲーであり、その後続くシリーズはVPを超えるような出来にはなっていないように個人的に思う。そんなイメージを払拭してくれるのを期待してプレイした今作の「ヴァルキリーエリュシオン」。ジャンルが違うがVPと比較しつつレビューを書いてみた。(多少のネタバレを含む)
ジャンル | アクションRPG |
プラットフォーム | PlayStation4、PlayStation5、Steam |
発売日 | 2022年9月23日 |
発売元 | スクウェア・エニックス |
開発元 | ソレイユ、スクウェア・エニックス |
公式サイト | リンク |
総評
要所要所にヴァルキリーシリーズ感が感じられるものの、肝心のエインフェリアやヴァルキリーについての描写に不満が残る。また、戦闘システムはよくある感じの3Dアクションでゲージのリソース管理や空中コンボなどをキメる楽しさがあった。しかし、探索やUIなど全体的に細かな不満が多くいま一歩な作品となっている。
良かったところ
・戦闘のコツがわかればサクサクと敵を倒せて上手く戦ってる感が楽しい
気になったところ
・エインフェリアや世界観についての描写が足りない
・武器が複数あるが、武器による差異があまりない
・探索はそこそこ面白いが、探索した先にある宝箱等のご褒美が良くない
・戦闘時のUIが不親切で面倒
・ミニマップがない
全体的に描写不足のストーリー(ネタバレ注意)
ヴァルキリーが共に戦う英霊「エインフェリア」は戦死者のはずだが、その死に際が描かれない。死んだ後に現世に何かしらの遺恨がある状態からヴァルキリーと出会い仲間になるという流れ。ヴァルキリーが魂を選定して戦死者を仲間にするはずなので、その「死」が描かれないのはどうかと思う。
一応、仲間にした後にキャラエピソードを見ることは出来るが、テキスト形式で表示されるだけで、しかもメニューから自分で選んでエピソードを見るのでなんとも物足りない。
初代VPでは死ぬ前・死に際がドラマチックにしっかり描かれていただけに今作の表現は残念でしかたがない。
メインストーリーは主神オーディンの命令で英霊を集めたり四宝という宝を集め世界を救うという流れの中で、任務に忠実なヴァルキリーがだんだんと人間達に情が湧き、オーディンの命令に疑問を持ち、自身の境遇を知っていくことで物語が進んでいく。これは初代VPに似たようなストーリー展開で、正直なところVPファンとしては嬉しくもあるが、それ以上に初代VP発売から20年以上経った今にしては演出不足だと思った。やはりエインフェリアや世界観の描写不足が足を引っ張っていて、初代VPに比べて感動はしなかった。
ただ一つ、個人的に良いと思った点はヴァルキリーが人間に情が湧き、段々と優しくなるところがわかりやすいところ。
ヴァルキリーの表情が序盤~中盤~終盤と柔らかくなるのが分かるように表現されているのは現行ハードならではだと思う。
初代PSでは表現出来ない戦乙女の表情がわかるのはよかった!ヴァルキリーかわいい。
コツが分かると面白い戦闘システム
敵には弱点属性が設定されているので、その属性で攻撃をすると「Break」や「Down」という状態になり一定時間動かなくなる。その無防備な間に敵を倒すことで戦闘はサクッと終わる。属性攻撃はいくつかやり方があるが、一番簡単なのが「アーツ」(魔法)を使うことで広範囲で複数の敵を一度に攻撃できるし、ボス戦であれば威力の高いアーツで戦うなどアーツの使い分けも楽しいところ。
しかしUIに不満がある。
属性が雷・氷・炎・土・聖・闇・無の7つあるのに対し、設定出来る数は4つになる。ステージに登場する敵は属性がまちまちのため、メニュー画面を開き敵に合わせて装備を設定しなおさないといけない。このせいで戦闘のテンポがかなり悪く、次々と敵を倒していく爽快感が削がれている。
ソウルチェインでターゲットした敵に急速に近づく事ができる。攻撃の種類によっては敵を吹き飛ばすのでソウルチェインで追いかけてさらなる追撃を加えるという使い方が出来るし、敵を倒した時に近くの敵にターゲットが移るのでソウルチェインで次の敵に近づくことでテンポよく敵を攻撃することができ爽快感があって面白い。
ヴァルキリーの育成を進めることでソウルチェインからの特殊攻撃も出来るので、ただテンポを良くするだけでなく戦闘で重要なアクションになることもある。
敵のタイプにはモンスターと人型があり、人型の場合は回避やガードを使ってくるので思うようにコンボをすることができない。そこで空中に打ち上げることで無防備になり攻撃を思う存分当てることが出来る。また、ソウルチェインを使うことで打ち上げ→攻撃→ソウルチェインで空中近づき→攻撃→ソウルチェイン…という風に空中に固定することで一方的に攻撃出来る。人型の敵が最初は苦手で時間がかかっていたが、空中コンボを覚えることでモンスター同様にサクサクと戦えて格段に戦闘が面白くなる。
ヴァルキリーを育成していくとジャスト回避・ジャストガードを使えるようになる。敵の攻撃を無効化し、さらに反撃が確定でヒットするため回避やガードを使ってくる相手に有用な手段となっている。さらにボスの攻撃も無効化できソウルも飛び出すのでソウルバーストのチャンスも作ることが出来る。
ジャストガード→打ち上げ→空中コンボ→ソウルバーストというコンボが出来るようになれば戦闘がかなり楽しくなるので、タイミングは少々シビアだがジャスト回避・ジャストガードは積極的に狙いたい。
僕はこういうジャストガード系が大好きなので、これが出来るだけでもかなり楽しめた!
ソウルチェインから特殊アクションで攻撃したり、ジャストガードからの反撃などで敵から「ソウル」が飛び出る。このソウルを吸収することで「ソウルバースト」が発動できるが、発動中は無敵で威力も高く今作の必殺技に当たるアクションになっている。ジャストガードや空中コンボでソウルを出現させ、ソウルバーストで敵に大ダメージを与えるという一連の攻撃をすることで気持ちよく戦闘をすることができて爽快感が出てくる。
人間系の敵だとガードされることが多いけど、少ないチャンスに大ダメージコンボが出来ると気持ちいい~
ストーリーを進めることで仲間になるエインフェリアを召喚することができる。序盤はプレイヤーが手動で呼び出す必要があるが、育成を進めるとジャストガードやダウンした時などの条件に合わせて自動で呼び出されるので操作が楽になる。
また、エインフェリアには属性が設定されているので敵の弱点に合わせて呼び出せば有利に戦うことも出来る。
面白みのない育成要素
ヴァルキリーの育成には攻撃・防御・特殊というスキルツリーが用意されているが自由度はほとんどない。
スキルツリーの面白いところはプレイヤーが好きな育成を出来るところだと思うが、今作はスキルツリーを進めるために必要な素材がストーリーを進行させないと入手できない。
例えば攻撃能力だけ特化してLv10まで育てようとしてもLv3までの素材しかなく、結局防御をLv3・特殊をLv3まで育成するしかやることがない。素材を集めるのではなく経験値のようなポイント制であれば何かに特化した育成ができ、プレイングにも幅が出たと思う。
武器がいくつか用意されているが、武器のステータスに差異はない。どの武器も同じ攻撃力である。モーションは武器ごとに違うので各攻撃の威力や使い勝手は違うが、装備ステータス上では一緒で実際に使っていてもそんなに差はないように思う。アーツ(魔法)の強い武器、ステータスは低めだけど攻撃範囲がかなり広く雑魚戦向きなど使い方を分けたくなるような違いが欲しかった。
達成感のない探索
家の裏、屋根、フィールドの隅…ジャンプやソウルチェインを駆使して色々なところが探索できるが、楽しいのは最初だけですぐに単調に感じられる。理由は探索のバリエーションが少ないことと、探索の末に発見した宝箱の中身が非常にしょぼいため。
ゲームの探索の大きな楽しみの一つは何かを発見することだと思うが、今作の場合それは宝箱であることが多い。発見した宝箱の中身がただの消費アイテムなのか、少額・高額の通貨、強力な装備やスキルなど…何が入っているかワクワクするものだが、ヴァルキリーエリュシオンの宝箱は基本的に飽和しがちな消費アイテムが入っていることがほとんどだった。
宝箱は全部開けたい派だから頑張って探すけど、途中から虚無の顔で宝箱明けてた…
戦闘や探索の後、自分が進むべき道を確認したいがミニマップがないので毎回マップを開いて確認する必要があるのがかなり面倒だった。似たような風景が続く上に頻繁にザコ敵と戦うので、毎回戦闘終了後にどっちだっけ…となることが多い。
戦闘で属性を切り替えるために頻繁にメニューを開くし、マップ確認でも開くし…かなりテンポが悪い
最後に
色々と不満が残る作品だったが、それでもヴァルキリープロファイルシリーズを今遊べたことは嬉しいと思えた。
戦闘についてはもっとやり込めそうで、さらにアップデートによって高難易度の追加やプレイアブルキャラの追加がされたのでまだまだ遊べそう。戦闘はつまらなくないからね。
ただ、これを言ってはいけない気もするが…いつか初代VPのような2Dフィールド探索+コンボRPGを作って欲しい!
待ってますスクエニさん。